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ふと思いついては消えていく戯れ言の中にも大事なことや本気なことはあるよな、と思い極力書き留めよう、という、日々いろんなことに対する思いを綴っています。
2024.05.20 Mon
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2010.06.08 Tue

私の故郷はどこかと問われると、少し回答に困る。
でも、多感な時期を過ごした北の港町が
妥当なのではないかと思う。

私は、あの町が嫌いだった。
過去形で言うには正確ではない。
現在進行形で、あの町のことは嫌いだ。
しかしそれは、けしてあの町並みが嫌いなのではない。

過日読んだ本に、あの町を表現するこんな言葉があった。

『でもあそこは、ローマと同じさ。
遠くから見た分には、美しいけれど、住むには活力がなさすぎる。
ふらっと旅行しに来るにはいいけれど、そこで暮らす街としては魅力はないな』

ローマのことはよく分からないが
この表現には頷ける。
とても美しい町だ。
が、住んでしまうと色褪せる。
一口に言うなら、権力者が己の利益だけを考えて
貪るだけの町だから。

元からあるものを大切に展示するのでなく
ぶち壊して趣味の悪い博物館を作ってしまったり
200年近い歴史のある建物を
反対されないよう市民に内密で壊したり
CMでもよく使われる景色の良い場所にあるビルを
ショッキングピンクで塗ってしまったり

先日も、何故か坂の上に自由の女神像を作ったらしい。
これは市がではなくて、そこの建物の経営者が
勝手に作ったもののようだ。
正直、お台場の自由の女神だってどうかと思うのに
歴史ある観光都市の石畳の坂道の上に
しょぼい張りぼての女神像は尚いただけない。

市民や旅行客からクレームは寄せられているらしいが
今のところ所有者も市も動いていない様子。


センスがダサいことは置いておくとしても
何故こうした景観を壊すようなことをしてしまうのか。
若しくは、それを許してしまうのか。

自分たちの住む町の歴史を知らないからだと思う。

歴史を知っていれば、誇りももてるし
如何に大切にすべき財産か理解していれば
当然もっと大切にするはずだと思う。

同じように歴史を積み重ねていたはずなのに
たとえば京都などとは自覚に雲泥の差がある。

町の歴史を、小学校の社会科の授業で
2時間ほど別冊を使用して学んだ覚えはあるものの
正直言って大した内容ではなかった。
大火が二度も起きた、戦争時空襲にあった、
どこそこに防空壕があった、など
”辛かった””大変だった”という記憶しか残っていない。

大人になってから自分で調べるようになり
こんなにも誇らしい歴史の数々を経て
あの町があると知り嬉しくも悲しくもなった。
先人たちに、なんと恥ずかしい町になりさがったことか。

あんな壮大な歴史を経ているなら
もっと栄えた誇り高い城下町になっていても
可笑しくは無かったはずなのに。

金銭的な価値があるとか
ドラマで出てきたから
という上っ面な歴史ではなく
あの町に根差す歴史をきちんと学ぶことで
郷土愛も育ち、町の運営も市民の生活も
変わっていくのではないか、などと考える。

いつかあの町を、『行きたい』に止まらず
『住みたい』魅力のある町に再興できたなら。
それに自分が微力ながらも尽力できたなら
多少なりとも恩返しになるのでは、とも、思う。

       *

母校は広いキャンパスがあった。
あそこに通った6年間は、あの町での数少ない
良い思い出のひとつだ。

桜やクロッカス、紅葉、クリスマスツリー。
四季折々に美しく、近所の幼稚園児が遠足に来るほどだった。

治安の悪化から、自分たちの在校時から
文化祭もチケット制に変更されセキュリティが強化されており
現在では流石に校門を開け放して誰でも自由に出入りできる
とはいかないようである。

ただそれでも、歴史ある建物を見学したい
庭の花を愛でたいといった理由があれば
卒業生でもない無関係の人でも
校門で帳簿に名前等を記入すれば、入ることが出来るのだそうだ。

今時、花が見たいだけの理由で
名前を書くだけで女子校に入れてもらえるなんですごい
とても有難いことだ
と、知人から言われた。

セキュリティとしては、甘いだろう。
何かあれば問題にされるかもしれない。

しかしそれでも、美しいものを望む誰にでも見て欲しい
という我が母校の対応を誇らしく思う。
そして、いつまでもそのままでいて欲しいと思う。

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