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ふと思いついては消えていく戯れ言の中にも大事なことや本気なことはあるよな、と思い極力書き留めよう、という、日々いろんなことに対する思いを綴っています。
2024.05.20 Mon
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2008.10.23 Thu

どこか、ほっとする温かさを感じた。

明日が忙しいと誰にでもない怒りを覚えたり
その日の疲れ度合いを反映したり
『本当のこと』が随所に書かれている。
口に出してくれないと説明できない気持ちとか。
つないだ手を固く握りしめてしまうことだとか。

波を分類しないというのは新鮮だった。
同じではない常に違う物を分類するのは
安心するため。確かにそうかもしれない。
周りが思っていることに自分が乗ってしまうことも
特に『現代の都会』ではよくあることだと思った。

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2008.10.22 Wed

『とかげ』の続編かと思ったが、焼き直し版らしい。
『とかげ』から数えると、もう何度読んだか分からないほどだ。

親を見切ること。
流れ。
傷を負うこと。
避けるか馴染むか。
命がけでシンクロを望むこと。
下心や暗黙の了解もなく、ただ泣きたくなる恋。
私が母に愛されていた思い出。

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2008.10.21 Tue

木村銃太郎さんについて知りたくて読んだ資料。

白虎隊はまだしも、世間一般に知られ
テレビの特集などで名前も聞くし、教科書にも載っているかもしれないが
二本松少年隊のことは
意外に思うほど知られていない。

どちらがどうという問題ではなく
どちらもそれぞれが真剣に
どうにもならない世論の中で国や矜持を守ろうとしたという点で
胸を打たれる。

やや偏っている嫌いはあるかもしれないが
非常にわかりやすく書かれいてる本。

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2008.10.07 Tue

嫌いではない。が、理解できない。
ラストまで読んで『で?』というのが感想。
だからなに?

淡々と続く文は嫌いではないが、なんの”結末”も無い結末。
勿論これでハツとにな川が付き合いだしたら興醒めなのだが、筆者の言いたいことが伝わらない。寧ろなにか伝えたいことがあったのかどうかがわからない。

誰もが似たような感情を抱いたことがある、青春の最中の生きていく痛みのようなもの。
その記述は共感出来る。比喩表現も面白い。だが、くどいと感じた。全編をそれで書かれても、どうなのだろう。
解りづらいこと=芸術 の図式なのだろうか。

筆者の他作品も読んだが、厨二病の痛さをありのままに描き、ただそれだけというパターン。
受賞するほどの魅力は感じられなかった。

生きることの痛みなら、文体や内容込みでもっと秀逸なものは他にいくらでもあると思う。

 

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2008.10.05 Sun
赤禰武人が扱われていると聞き、読んでみた小説。

赤禰をはじめとする当時の人々の霊魂を現代の裁判に呼び出し
今一度是非を問うという設定は面白い。
が、全体的に淡々とした印象。
芝居の脚本として見れば面白いが、小説とするには正直いまいち。

内容も、肝心の赤禰が黙する設定になっており
現代の弁護人と証人として出廷した人間たちの言葉が主な上
高杉と赤禰の和解が自分には安易に感じられた。
筆者の他作品はまだ読んだことがないが
他作品の一覧とこの本の内容から
高杉晋作が好きなのではないか、という印象を受けた。

短編集なのだが、表題作以外にも
いくつか疑問点を感じる部分があった。

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2008.09.29 Mon

mixiニュースで取り上げられており、賛否両論だったのが読んだきっかけ。
自分は筆者の他作品も含め、好きではない。人間=恋愛にして、その関係性も恋愛自体も質の低いものに貶めているような気がしてならない。
そんな人が、文豪たちの作品を掴まえて、文学作品をただの恋愛、今時風に言うとスイーツ(笑)としか捉えない視点で批判するという本、と思えた。それがmixiニュースを読んだときの自分の早とちりであれば良いのだがと思い読んでみたものの、何度真剣に読もうとしても全く頭に入ってこない、思った通りの浅い文章の羅列。

まず、雑誌連載の為に初めて読んだ本を多く取り上げている。
正直、プロの作家の癖に文学作品を全て読んでいないという点が自分には勉強不足に見え、信じられない。にも関わらず、平気で稚拙な論評を繰り返している。
評論の内容もたとえばかり。自分の好みで同じことを褒めたりけなしたり。
「中学生の読解力はこんなものだ」と自分の低レベルさを正当化かつ普遍化しようとしている。
「この話のことを××な話だとみんな思ってるだろう。私もそうだった」
という書き草が多かったが、正直、おまえと一緒にするなと言いたい。
まともに読み解いている人間は、小学生だってもっとまともな解釈をしている。

「売り込むには汚くてもなんでもいいから刺激さえ大きければなんでもいい」
という記述があったが、それはまさに筆者の書いている文章それ自体のことではないだろうか。

文豪と言っても、時代やジャンルが統一されていない。
村上春樹など自分も好きではあるが、夏目漱石と並べて文豪と言うのは何か違う気がするのだが。

ただの感想文。しかも作家の肩書きがなければただのあるひとりの女の日記レベル。小学生の読書感想文コンクールでだって、この内容と文章力では箸にも棒にも掛からないだろう。
価値観が違うせいか彼女の書いている内容に全く同意出来ない。
小説を恋愛でしか見てない浅ましさに、思わず「何をいってるんだこいつ」と思ってしまった。
浅い知識である話とある話を比較してみたり、名指しで芸能人のことを書いて見たり、おまえ何様? と感じた。

筆者のファンが、筆者のエッセイとして、筆者が好きだから筆者の書く文はなんだっていいから読みたいのだ、として読む分には全く問題がないと思う。好き嫌いの問題だ。私は合わない、嫌い、それだけで済む。
が、文学系列の雑誌に、作家という仮にもプロが連載し、それを解説本と紹介されていることを憂う。
はっきり言って、こんな本を解説本として読もうとする人≒文学を読んだことがない人
が、これを読んでこれを入口として文学を読み出すとは思えない。
読んだとして、文学を理解できるとは思えない。

そも文学は解説が必要なのは受験や試験のためであって、それぞれに解釈し、論じ合い、情景の美しさを感じ取るものだと思う。
それを仮にもプロが『解説』(しかもハーレクインと勘違いした体で)
してしまうところに怖さを感じる。


「売り込むには汚くてもなんでもいいから刺激さえ大きければなんでもいい」
から
「セックスしよう」
とゴールデンタイムに言わせるドラマが流行り
その程度の作家が文学を批判して金を貰える。
読み手のレベルが下がり、本の売上が下がって云々というが、
確かにこうした作品が流行るのは、読者のレベルが下がっているせいとも言える。
しかしながら作家やこういった原稿を出版してしまう出版社側にも、低レベル下して廃れていく責任の一端があると思う。

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2008.08.23 Sat
特にこれと言った大きなことはないけれど
それに向けて着々と物事が進行していっている感じが
読んでいて血の温度上がります。

ネタバレですが

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2008.04.13 Sun
原作も前作も知らない、非常にニュートラルな状態で見たが、
話題作という認識だっただけに非常にがっかりした。
正直言って、内容があまりに浅い。
何が言いたいのか、パニック映画なのか娯楽映画なのか、
教訓を促したいのかさっぱり分からない。

確かにCGは綺麗かもしれない。
が、ひきの映像が多すぎる。
函館なら函館山から見る形、大阪なら大阪城、東京なら東京タワー、
というような、主要の建造物や観光名所が揺れや津波で
破壊されていく様子がうつるだけでは、怪獣映画を見ているような
チープな印象を受けた。

非常に中途半端なのがキャラづけ。
ここが中途半端なので、阪神大震災で両親を亡くして、
と唐突に語られても臨場感もなく、
寧ろ実際の被災者に対して失礼ではないかとすら思えてしまう。
揺れる度に震えているほどトラウマを抱えているみさきが、
母を亡くしてあれだけの被災に巻き込まれて
普通でいられるのもおかしい。
みさきたち一般人は番号札を配られて管理され、
地道に徒歩で泥だらけになり危険に見舞われながら避難を続けているのに、
小野寺はなぜか各地に、しかも怪我も汚れもせずにふらふらと現れる。
そして日本を見捨てて仕事もしないで
女を連れて海外へ脱出しようとする。
そんな男と恋愛が発生する理由が視聴者には分からないのに、
突然情熱的なキスシーンを繰り広げられてもひいてしまうばかりだ。
みさきたちの避難にしろ、助け合いだったり奪い合いだったりの
人間ドラマが描かれていないのに、
小野寺は更に現実味がない。
やる気もなさそうな状態からなぜやる気になったのかも見えてこず、
感情移入ができない。

また、日本が崩れ出してからが展開を焦りすぎていて、
海外へ脱出するというのも臨場感がなく
いつの間にか淡々と進んでいく。
小野寺が命懸けで行動を起こすことも唐突な上、
日本全国の問題が小野寺と博士二人の手に委ねられているのも
納得がいかない。
命をかけてまで守るのは、ほぼ山脈しか残っていない日本。
守る価値があるのだろうか。
その状態から復帰できるものだろうか?
そこも納得がいかない。

役者は豪華で演技派揃いなのだが、
何故この仕事を受けたのか疑問に思うほど。
特に福田麻由子ちゃんの演技は際立っているものの、
役者が素晴らしい演技をすればするほど、
設定と演出の臨場感の無さが際立ってしまい非常に残念だ。

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2008.04.11 Fri
橋田さんの本だと認識はしていたが、
ご本人が亡くなられた後奥様が編集されたものだとは思わずに
図書館から借りてきた。

橋田さんの文章は歯切れがよくてとても痛快だ。
戦場と戦争は違うというのは、本当に名言だと思う。
戦場が悲惨なのは当たり前なのだ。
人が殺しあうのが戦場という場なのだから。
ここまで分かりやすくはっきりと、
しかもいっそ明るく語ってくれる『大人』は中々いない。
特に今日の日本で、戦争を語るだけで右思想という偏見があるほどの中、
ここまで痛快に事実を言える人はそうそういないだろう。

クラスター弾が、具体的にパチンコ玉のような鉄の弾が飛び散って
肉に食い込むようになっているというのは、不勉強ながら知らなかった。
高校生の頃、地雷が人を殺すことが目的なのではなく、
怪我を負わせて戦闘要員として役に立たないようにする上、
その介抱で更に人員が削がれることが目的なのだと知ったときと、
同じ衝撃を受けた。
人はとても賢い生き物なのだ。
方向を間違えば、そんなにも悪魔のような兵器を開発し、
使用することに躊躇がなくなる。

奥様が香田さんのことを少し言及されていた。
本質を見ていないというご指摘、真にごもっともだと思う。
フリーだから大手の会社マンが行けない戦場でも、
『自己責任』ということで入ることができる。
その時点で自己責任を負っているのに、
勝手に助けようとしたり勝手に文句を言う政府、マスコミ、
それに踊らされる馬鹿な国民。
当時私もうんざりすると同時に怒りを抑えられなかった。
そもそも何故そこが、自己責任だなだとと
いちいち馬鹿な念押しをされなければ
行ってはいけない地域になってしまったのか。
その問題は語られない。
日本は平和主義だから?戦争については語らない?
しかし金は出すし、戦場を肌で知ろうと決意し
不幸にして亡くなった青年を扱き下ろすことだけはする。

言葉遊びはもうたくさんだ。

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2008.04.05 Sat

5日土曜日の14時の回、見てきました。
上川さんが帰ってくるから見に行ったようなもので、
原作は面白いけれど私の好みではなく、成井さんがどう脚本に直すのかに期待していました。
結果、流石としか言いようの無いアレンジと
役者さんたちの演技力で、素晴らしい物に仕上がっており、大満足でした。
以下ネタバレ含みます。


原作は、39年前へ行けるタイムマシン『クロノス・スパイラル』の開発をしていた主人公の男の彼女が事故で亡くなり、
男はパソコンと退職金を持って過去へ飛び、
株で稼ぎながら生活をする。
事故が起きる直前自分自身を呼んで彼女を事故から守るよう忠告する。
と、きちんと彼女を守った→過去に飛ぶ必要がなくなった→年老いた男の存在自体が消え、何事もなくなりハッピーエンド。
短編であることも手伝って、ただそれだけのお話です。
過去へ飛ばないなら彼女は助からないのではとか、そういったパラドクスは無視されています。

舞台のきみ時間は、主人公秋沢里志が海外勤務から戻り、それを妹と、海外に行く前に別れた彼女の梨田紘未が迎えに来るところから始まります。
この時点で、舞台上はすっかり隆也ワールド。
ぶっきらぼうに「おう」としか挨拶をせず、理屈っぽい理系の不器用な男。
紘未のことがまだ好きだけれど、彼女を幸せに出来ない。
研究が一番大事である自分。数分で観客に全て伝わってくる。
脱いだコートを畳むだけでまだ温まってもいない会場を笑わせるなんて、上川さんだから出来る事だと思う。

妹の暗躍で二人は馬車道ホテル(クロノスの舞台でシック・ブーケのお得意様だったホテル)
の最上階のレストランで食事をし、里志がプロポーズ。
見知らぬ誰かから贈られたシャンパンで乾杯をする二人。
式を挙げ、新婚旅行はイタリアへ。
紘未はジュゼッペ作のカメオが欲しかった。
婚約した時、母が父から贈られて、大事にしていたのに無くしてしまったと聞いていたので、
母と自分に一つずつ欲しかったのだ。だがみつからなかった。

里志は生き生きと仕事に打ち込むようになり、自分の理論を応用してクロノス・スパイラルを完成させる。
スパイラルは39年前のこの場所にしか飛べない。
しかも片道切符。戻って来ることが出来ない。
いよいよ明日は実験の日。そして紘未の誕生日。
その夜紘未は、妊娠したらしいと里志に打ち明ける。
喜ぶ里志。でも明日はどうしても仕事が休めない。
紘未は一人で病院に行けるから大丈夫、と笑う。
翌日、実験は失敗。出力が足りなかったらしい。
そこへかかってきたのは紘未がトラックにはねられたという電話。

ここまでを詳しく、幸せな日々を丁寧に描くことで、観客は感情移入をする。
原作を読んでいた私には、やがてくる悲劇が恐ろしく大きなものになるし、
読んでいない人にはあまりに唐突で無慈悲なものになる。
あれだけ幸せそうだった里志が取り乱し、医師にくってかかろうとして妹に止められる。
クロノスで感情的な頼人が医師に叫ぶのとは、また違った痛々しさがある。
やっぱり自分が仕事を休んで病院に付き添っていればこんなことには。この設定が里志の悔恨の念をより観客に伝える。

紘未が亡くなり、冷静に喪主を勤めて葬儀を行った後、里志は失踪する。
後を追うのではないかと心配してメールを打つ妹。
一月後、里志は戻ってくる。
結婚する前の、ぶっきらぼうで感情を表さない里志に戻っていて、妹にこう言う。
「幸せだったこの一年は、神様がくれた休暇だと思うことにしたんだ。
休暇は終わり、俺は研究だけの生活に戻る。ただそれだけのことだ」
何度も茶化して妹が語るモノローグで強調された『理系の人間』。
一ヶ月の間に納得出来る答えを考え、無理矢理思い込み、以前の自分に戻ろうとする里志の危うさ。潜む狂気。
そこに立っているだけで痛々しい。
これもまた、クロノスで小さい体で必死に走り回っていた菅野さんとは対照的に、自分の体を持て余すような上川さんの芝居が素晴らしい。
里志は実は紘未に内緒でカメオを買っていた。
あの朝、渡すつもりだった。
彼は幻想の紘未と会話をする。
「いつでも側にいるわ」「でも、触れないじゃないか」
研究が一番、君は二番とうそぶいてつよがっていた自分。失って気付く彼女の存在の大きさ。
触れない、と言った後ステージに取り残される上川さんから漂う孤独感に、見ているこっちまで取り込まれそうだった。

失踪していた間に設計図を書き直していた里志。
今度こそスパイラルは完成する。里志は会社を辞めて、退職金を全て39年前の金に変える。
誰にも言わずに過去へ飛び、38年を過ごし、紘未の事故を防ごう。
荷物はデイバッグに詰めた、800万とノートパソコン。
そして、紘未に渡す為のカメオ。

同僚たちは里志が過去へ飛ぶつもりだろうと気付き、駆け付けて手伝ってくれる。
野方は一人反対するが、聞き入れられない。
このシーンを見て、何人も何度も人を過去へ送ってきた、いつも聞いて貰えず、知っている人と会えなくなる野方さんの切なさを強く感じた。
彼は彼で、理性的なだけで、過去へ飛びたい気持ちだって理解はしているのだ。
いつまでもボールペンを大事にしているくらいなのだから。

里志がデイバッグを抱えてスパイラルに乗り込み過去へ飛ぶ。
ここで一幕が終わり、15分の休憩を挟む。
ハーフシアターでもないのに今までは有り得ないことだったのだが
この幕間で1枚100円で売られる新聞がまた心憎い演出。
表で一幕を振り返り、裏で二幕から始まる1970年の紹介をする。
観客は、万博最終日である39年前の世界に思いをはせる。

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2008.03.21 Fri
映画の番宣が面白そうだったので、読んでみた。この作者のものはクローズド・ノートしか読んだ事がなく、こういったテイストのものを読むのはこれが初めてだ。

以降ネタバレ含む。


誘拐事件でなくとも、自分が深刻な状況を抱えて平和な光景にまざっていることへの違和感は、誰しも一度くらいは抱いたことがあるだろう。共感のできる記述だ。
時間に遅れて犯人を逆撫でするのでは、という気持ちはわかりすぎるほどわかるので、この点は被害者の両親の気持ちがよくわかった。新宿にしろ横浜にしろ、多少の土地勘があるので読んでいても臨場感がある。
巻島さんがパンやカップ麺ではなく、目に付いたスライスチーズを食べるところがリアルに感じた。
彼のマスコミの前での失態は、いくら娘のことがあったからと言ってもちょっとやりすぎではないかと感じた。いくらなんでももう少し自制心が働くのではないか。

川崎も多少知っている場所なので、やはり読んでいて位置関係など色々なことを想像して読んでしまった。川崎男児連続殺人事件に事件がうつって、巻島が劇場型捜査のために呼び戻されるというのは面白かった。
ただ、個人的に植草が気に食わない。あまりに私情で動きすぎている。実際にここまで私情で動いてしまう者が警察にいるなら、かなり恐ろしい現実だ。下巻で彼の私情がどう事件の展開に絡んで行くのだろうか。

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2008.03.21 Fri
起承転結、エピソードの強弱がはっきりしている。初代版の良さを失わず、現代向きにより劇的にアレンジされていてとても好感がもてる。劇場公開時良い噂しか聞かなかったが、なるほど頷けた。

以降ネタバレ含む。



冒頭に満月牧師と美夜子らのシーンや、中途に悪役のシーンを挿入し、不安を煽る構成。
ドラえもんの石像も屋根をぶちやぶって落ちてくるとはかなりインパクト大。のび太くんの石像が空き地にあることをしずかちゃんがいいにくるのは一見不自然だが、それにより問題なく主要キャラ5人の紹介にもなっているところが心憎い。
この石像については、形が変わっていることについて「柔らかい石なんだ」とか初代版ではあまりに不自然だった台詞が変更されている。雨の中庭に出すよりもドラえもんのポケットの中に入れる方が自然だし、腹痛を起こして未来へ一度帰ることで後々ドラミちゃんが心配する伏線にもなっている。
魔法世界になってから喧嘩したふたりが、「石になれ」とかかりもしない魔法をかけ合おうとするのはシャレが効いている。
美夜子のママのエピソードはオリジナル設定だが、より感動的にしあがり面白い設定だったと思う。
満月博士が満月牧師と呼ばれるのは少し慣れなかったが、無理がある設定ではない。
五人がのび太くんの家に揃ったときはつい感動してしまった。
偽物の美夜子とのやりとりも冒険活劇らしいシーンで思わず引き込まれてしまう。
本物の美夜子がねずみの姿にされているというのも、初めから猫なのよりも、ドラえもんが嫌がって気付くのが遅くなるというのも不自然さがなくなるし、中々魔法を使う出番がないしずかちゃんたちの腕のみせどころにもなる。魔法世界の小学生らしく、遊び心があって良い。
悪役の手下の正体が美夜子の母、とすることで、物語はより感動的になるし、魔王の心臓のありかも母の口から語られることになる。美夜子がしずかちゃんに、髪をのばしてみる、と話すシーンも、しずちゃんと絨毯の中で話していたシーンとつながり、女同士の会話として心温まるつくりになっている。
個人的には、やはり違う世界から来たのね、とのび太くんと会話するシーンが好きだったのでそれが無いのは残念だったが、この展開も非常にあり。
最後に夢だったのかも、として、魔法が使えたのも「まさかね」とのび太に言わせながら、駄目押しで箒が樹上にあるのも良い演出。
若干残念だったのは、テーマソングが中途半端なところで切られていたことぐらいか。

初代版が好きな人間でも満足のいくリメイクだろう。

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2008.03.13 Thu
プロの書いた小説にこう言うのもなんだけれど、
相も変わらず文章が上手い。
早々と最愛の姉という言葉を出し、
姉の生活を語り色々な形での最愛を見せた上で
最終的に『最愛』を語る。
それ以外にも例えば、
『事が起こってからでないと警察は動いてくれない』
と同じ文章を間を置いて二度繰り返し、
三度目にして
『動かないのは何も警察だけではなかった』
とすることで、事態の重みが強調され
ずっしりと心に響く。
この重み、その時点で読者に分かっている以上に
重みがあったことが、最後まで読んで
初めて分かるところがまた心憎い。

以降ネタバレ。


男子高校生との二十代前半の女性恋愛は
そんなにいけないことなのだろうか?
そんなにも後ろ指刺されなければ
ならないことなのだろうか。
高校生が17歳でなく18歳だったなら問題なかったのだろうか?
そんなのくだらない。
当人同士が真剣だったなら
それで十分だと思う私は甘いのだろうか。
たとえ二十歳を過ぎていたって、
若い側の親は心配するし、年上側は気に病む。
人の恋愛を犯罪呼ばわりする同僚の男の方が、よほどくだらない。
四の五の言わずにそんな暇があるなら金を返せばいいのに。

主人公が姉を何度も強いと言うし、それを否定はしないけれど
そこまで強いとは正直思わなかったのは、
千賀子さんが私と似た人間に思えたからかもしれない。
私は男同士の、しかも知らない人間同士の揉め事を止める勇気はない。
ただそれでも、人の愛し方が似ている気がするのだ。
伊吹に自分の過去の傷や罪を洗い浚い話してみたり、
相手が殺人犯でも、今現在償っていない罪を背負っていても愛することができたり
罪を償って戻ってくるまで待っているという
意思表示のために、
敢えて本人が渋っている入籍をしてみたり。
この種の真っ直ぐさ、というよりも強引さだろうか。
これは私の中にもあるものだ。
好きな人には恥と思うことでも曝け出すし、
それで相手が少しでも気が楽になってくれたらと思う。

相手がどんな間違いを犯していても嫌いにはならないし、
相手を思いこそすれその間違いを正そうとするけれど
絶対に見捨てることはない。
全身全霊をかけて好きになる。
全力で、真剣だ。

だからなのか、彼女が実の弟と関係を持ったと聞いても、
正直なにもマイナスの感情は抱かなかった。
『世間』の人間はやはり違うのだろうか。
汚らわしく思うのだろうか。
親戚や、真尋のように、言葉を失って距離をとってしまうのだろうか。

いつも真保さんの本を読んでいると、
どんでん返しに継ぐどんでん返しに騙されるのだが
今回初めてそれが無かった。
悟郎が真尋に、
愛する女性の子供をこの世に迎えることが出来なかった
と語った台詞、相手は姉ではないのかと思っていたので。
傍から見ていたら、近親相姦で許されない恋なのだろう。
汚らわしく非常識に思われても仕方ないのかもしれない。
でも、本人たちにとってはそんな汚い気持ちではないはずだ。
もっと崇高で透明な気持ちだ。純粋なのだ。
この目の前の人を好きだという気持ち。
どう大切にしたらいいのか、愛したらいいのか、
それを伝えたらいいのか。

理屈ではないのだ。

哺乳類である限り、触れることで愛情を確かめ合うのは本能でもあるのだし、
なんの不自然もないように思えてしまう。
ただ好きなだけなのだ。
ただ、愛しているだけなのだ。
大切なだけなのだ。
魂の結びつきとでもいえばいいのだろうか。

悟郎が姉を抱いたことはごく自然なことで、
どうしても間違っていたとは思えないのだ。
悟郎と千賀子それぞれの気持ちが、
分かりすぎるほど分かってしまう。
私が千賀子の立場でも、悟郎を受け入れるだろうし
子供を宿したとしたら生みたいと思うだろう。
大切な人の血を分けた大切な命なのだから。

互いの存在を確かめ合い、赦す為に寝ることだって当然あるだろう。
子孫を残す以外に性行為に目的を見出したのが人間なのだから、
快楽のためでなく確かめ合うために
互いを大切に思ってことに及んでなんの不自然があろうか。


『一瞬の感情が人を永遠に縛る』。
この言葉にはドキッとした。
一瞬が永遠になる。
忘れられない人をいつまでも心に抱くことも
逆上して人を傷つけることも
その一瞬がいつまでも自分を縛ることになる。
たとえ一瞬の気持ちでも、たとえそれに縛られても、それは一時の気の迷いとは違うものだ。紛れも無く自分の気持ちだから、迷っても後悔はしない。
迷っても進むから結局は迷わない。続いていくから永遠になる。


ラストは衝撃だった。
いくらもう長くはないと言っても、安楽死させてしまうとは思わなかった。

ただ、自分の手で最愛の人を殺す。
これもまた最愛であり永遠だ。永遠に千賀子は悟郎のものになり、
誰にも穢されることがない。
そしてその罪も愛も背負って生きていくこともまた、
一瞬の感情に縛られた永遠なのだろうと思う。

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2008.03.11 Tue
今回も、セオリー通りの展開で安心して読める。
1・2巻と比べればややアプローチが変わり、面白かった。
リーリンもやっと人となりが分かるように描かれたし
メイシェンやニーナ、フェリの気持ちも
随分とストレートに描かれてきているように思う。

以降ネタバレ。

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2008.03.11 Tue
恐らくこの本の定義で言えば、まず間違いなく
犬人間の部類である私としては、
全体的に小気味良く面白く読めた。
命好きと言い切るには、知識も足りないし
虫は恐くて触れない。
意思の疎通ができそうかできなさそうかで
判断しているので、
山羊ですら眼が合わない気がすると
もう自信がなくなってしまう。

それはさておき。
豊富な知識と経験に基く物語はかなり面白かった。
蠍の親としての愛情や、
リーラやソロモンの件など、読んでいて涙がでてしまいそうになるほど
動物たちの純粋さが余すところなく
語られていると思う。

同種同士で傷つけ合うおろかなことをするのは人間くらい。
そうなのだろうなぁと悲しいが納得した。

動物が好きだと真面目に言い出すと、
アンチ動物好きたちから屁理屈としか思えない攻撃を
受けることはよくある。
例えば、飼っている蛇に生き餌である鼠を与える記述が出てくるが、
動物が好きならそれがなぜ残酷ではないのか。
という突っ込みは必ずと言っていいほどくる。
下手をすれば、同胞であるはずの
ハムスターの飼い主から残酷だなんて
いわれてしまうことすらある。

家畜を飼うことと野生動物を飼うことの違い、
野生動物を飼うことの意義、意味、罪について、
野村先生は当然ながらしっかり把握し思考し、
ご自分なりの結論をはっきりと持っておられるので、読んでいて気分がいい。
続刊の『ダーツよ~』では、崇高なことを並べた後で、
これは建前で欲しいから、かっこいいから飼いたいんだ!
なんてぶっちゃけていたりして面白い。

知識も経験も不十分な分、
そこまではっきりと言い切る自信はないものの、
犬人間としては愛犬への愛情は誰にも負けない自信があるし、
愛犬が暮らしやすい世の中にするための努力は
実際惜しまずにできるところは
やっているつもりでいるので、
私もこのまま継続していきたいと思う。

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2008.03.10 Mon
相変わらず切なく心温まるストーリー。
コハルちゃんがどうにも可愛くてたまらない。
以降ネタバレ含む。


コハルちゃんが出かけてしまって、一人じゃやる気が起きない
とだらだらしてしまう正宗くんの気持ちは、とてもよくわかる。
過ぎる時間をそれなりに過ごせばいいものを、
喪失感とまではいかないまでも、何か欠けた様な感覚で
どうにもやる気が出てくれないものだ。

正宗くんのプロポーズの思い出も切なかった。
「僕と結婚してくれませんか?」。
私はストレートにこういわれるのが一番嬉しいけど。

大事な人に心配をかけたくない気持ちは分かる。
でもやはり、何も知らないのは悔しい。
そう正宗くんが言うことで、どれだけ陽子さんが
何も言わずにいってしまって、自分は何も知らずにいたことを
悔やんでいるかがわかってとても切ない。

辛いのと不幸なのとは同じではないというのは、
綺麗事かもしれないが、そうだと思うし、そうだといいなと思った。

新キャラのカンナとアンナは良い味を出していた。
特にアンナちゃんは、それくらいの年頃の女の子を出すことで、
陽子さんのお母さんの心情も吐露されて綺麗な展開だと思う。
冗談でしょう、と卑怯だわしか言ってやれなかったと
アンナちゃんのお母さんに陽子さんのお母さんが話すシーンはしみじみじんとくる。
親という立場といえどひとりの人間であって、未熟で後悔することも勿論あるものだ。

アンナちゃんとシローくんを前にして、 選択肢の話をする正宗くんも切なかった。
正宗くんだってやはり、選択肢は欲しかったはずだ。
陽子さんが心配をかけたくなくてした優しさは勿論わかっていても、やはり。
アンナちゃんに、高校生の頃に陽子さんに打ち明けられていたらどうしたかと訊かれて、
厳しい質問でもあっただろうけど、年下の女子高生にきちんと、
同じ答えを出せていたらいいなと思う、と答えた正宗くんの真摯さには胸を打たれた。
陽子さんが健在で、3人で温かい家庭を築いている様子を想像して、じんとしてしまった。

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2008.03.10 Mon
機会があったら見てみようと思っていた映画。
正直、映画館に見に行くほどのものではなかったなというのが
個人的な感想。

間宮兄弟は、ほのぼのとして面白いが、ぶっちゃければキモイのと紙一重。
実際に目の前にいたら、私ならホームパーティに行くのはかなり悩むかもしれない。
同僚とかなら兎も角。
それに比べて本間姉妹はかなりリアルで、こんな姉妹いそう、という感じがする。

見当違いな間宮兄弟の反省会は、苦笑い半分で吹き出してしまう。
些細な描写が細かくて面白い。
特に取り立ててクライマックスがあるわけでも、それによって成長したり変わったり
何かが解決して終わったりというわけでもなく
坦々と日常が描かれていく。
何も考えずにのんびりと見て、ほっこりできる映画。

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2008.03.10 Mon
ミツルは圧倒的に強く、ワタルは弱いけれど可能性を秘めている感は、
原作にも通じるものがあるのだろうが…。
ミーナのキャラはちょっと可愛い。
が、やはり原作に比べてストーリーが浅くなった感は否めない。

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2008.03.10 Mon
ワタルがカオリと共に旅をしているので、単純にミツルとワタルの競争的な話とは
大きくかけ離れている。
老神教と女神教の対立も随分と強調されている。
漫画としてはアクションシーン満載で面白いのかもしれないが、
原作を知っているだけにやや微妙なストーリー展開。

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2008.03.06 Thu
遂に最終巻。
やっと読み終えました。
巻が進むにつれ、どんどん世界観を伝える挿話が多くなってきて。
これは好き嫌い別れるでしょうね。
で、一体なんなんだ?って思う人は思うでしょう。
私は結構こういうのも嫌いではないのですが。
それでもノルウェイの森ほどは嵌りませんでしたね。
同じ女性として、クミコやメイ、マルタ、クレタらの
言動にあまり納得がいかなかったせいでしょうか。
かなり観念的な世界観なので、
感覚的に理解できなければ意味不明で終わってしまいますよね。

結末自体は多少現実味がありますが
それに至る過程も不安定で、事実はよくわからないし、
事実は重要ではない物語という気がしました。


ネタバレですが


シナモンが書き記すねじまき鳥クロニクル、という設定は面白かったです。
一応クミコも戻ってはきているわけで、ハッピーエンドと言えなくも無い。
メイの手紙は一体どこへいったのだろう。
折角彼女が書いたのだから、遅れてもいいから届いて欲しいものですが。

いくつか心に残る言い回しはありましたが、
中でも『相手の瞳の中に自己の反映を見た』という表現は
今の自分にはとてもよくわかるものでした。
男女とか好きとかそういう感情とは全く別のところで、
兎に角この人は自分に似ている。自分自身なのだ。
という感覚をもつ相手に巡り合うということは、
人生において中々ないことではあると思うし
自分自身であるからこそ
好きで大切でどうしようもない気持ちも本当ならば、
通常の現実味い溢れた恋愛は成立しないというのもまた
本当なのではないかと思いました。

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2008.03.03 Mon
前半に様々な事象や感情が描かれ、後半に見せ場がある展開は1巻と同じ。
ただ今回は、女性陣のキャラが前面に出ているようだ。
この巻を読んで、フェリが前より可愛く思えた。


以降ネタバレ。

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2008.03.02 Sun
お薦めしてもらって読んでみた本。
最近のラノベにはそんなに詳しくないので全然知らなかったけど、
よく纏っていて非常に読みやすい。
ラノベの柔らかい文章と、しっかりした文章とが両立していて
セオリーを守りつつ独特の世界観を展開していくので、安心感もある。
なんと言っても、レギオスとダイトの設定が面白い。

個人的にはニーナやナルキのような人に好感をもつ。


以降ネタバレ。

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2008.03.01 Sat
微にいり細にいり、非常によく出来た映画だと思う。
加瀬くんの素朴な演技も非常にリアルだ。
冒頭で歯磨きをしながらふと泣き出してしまうシーンなど、
まったく説明のない短いシーンではあるけれど
彼の内心が窺える素晴らしいシーンだったと思う。

冤罪事件というのは、実はよくあることで、痴漢事件以外にも
こうしたことで苦しんでいる人というのはたくさんいる。
数ある中でのひとつの例に過ぎない。
裁判官や検察、弁護士にとっては数ある中のたったひとつ。
しかし被告にとっては一生に一度あるかないかの、
人生を左右される重大事件なのだ。
その感覚が麻痺し、出世欲などに浮かされて真摯な態度を失う裁判官
というものは確かに悲しいかな存在する。
判決文ひとつとっても、時間をかけて書く人もいれば、
今までの似たような判例からひろってきてコピペですませる人もいる。
忘れがちではあるが、医者にしろ警察にしろ裁判官にしろ、同じ人間。過ちも犯せば
手を抜きたくなることもある。

誰も自分の話を聞いてくれない。
頭から嘘だと疑って信じてくれない。
拘束されて、日々罵倒され、疑われ、時には暴力を振るわれ
そんな環境の中で日々過ごして、どれだけ疲れることか。
どれだけ全てに絶望することか。経験したことの無い人にはわからないだろう。
自分がやっていないにしても、そんな絶望を味わい、
リスクを背負って裁判に挑むよりも、無い罪を認めて罰金を支払った方が安い。
実際その道を選ぶ人もいるだろうし、それはそれで当然の選択だと思う。
実際自分がこんな目にあったなら。
自分は血の気が多い方なので、絶対に濡れ衣を認めたくはないけれど、
そのために無駄に費やされる時間や名誉、金、その他もろもろを考えると
決意は揺らぐ。


以降ネタバレ。

荒川先生の言っていた、
「頭の良い人間ほど相手の言葉を嘘だと疑い、騙されることを恥だと考える」
という言葉は非常によく理解できる。
頭が良いわけではないが、私自身恥と考え
相手の言葉を心底から信じられないことというのは儘あるからだ。

ラストの加瀬くんのモノローグは非常に恰好よかった。
自分は自分が無実だということを知っている。裁判官は間違いを犯した。
そうして気を強く持って、控訴して無実を勝ちとって欲しいものだと思う。
存在感は然程強くなかったものの、山本くん演じる友達もかなりいい味を出していた。
フリーター仲間らしく、どこかふらふらしていて頼りないものの
直情的で裁判官に怒鳴って出て行ってしまう熱さも持っている。
きっと彼がこの先も支えてくれるのではないかと期待する。

陪審員制度に向け、訴えかけるものの多いリアルな映画だったと思う。

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2008.02.28 Thu
野村先生のことを初めて知ったのは何かのテレビ番組で、
その動物を飼ったことがなければきちんと理解して治してあげることができないから
と様々な種類の動物を飼っているプロ根性に惚れました。
この本は、知人に薦めてもらって手にとって見ました。

冒頭から、リーラについての記述に危うく号泣しそうに。
動物好きなら誰でも共感するのではないでしょうか。
自分は命好きとまでは言えないけれど、犬人間ではあると思うので
大部分において共感できました。
笑いあり涙あり。
非常に読みやすくもあります。

きちんとしつけられた犬にも人権を。
馬鹿なガキの方こそ鎖につないでおけ、とか
ちょっと乱暴に聞こえるのかもしれないけれど
私の持論と全く同じで、
やはりこういう考え方をする人は他にもいるのだな、と
どこか安心しました。

ペットを飼うという行為のエゴであったり、
獣医としての仕事ぶりや考えであったり、
はっきりしていて読んでいて小気味良い本です。

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2008.02.26 Tue
新しい自分。
フィクションの世界には良く出てくる表現だ。
九死に一生を得た人などもよくそういう言葉を使うけれど、実際たった一瞬や一晩で新しい自分になれるというのは滅多にないことだと思う。
そう簡単に新しい自分を手に入れられることがとても羨ましい。新しい自分に見合った名前を自分で探すなんて素敵なことだ。
実際問題呼称程度の名前なら自分で考えることもできるだろうが、
カラオケの会員証を作るのにも身分証明がいるような昨今ではそれすら難しい。

以降ネタバレ。
クミコが出て行ってしまったことは、少なからずショックだった。
ただ、彼女が料理と買物の件でトオルと喧嘩をしたときのことを思い返せば、納得がいくようにも思う。
たとえ愛していてもその気持ちに迷いがあるとき、些細なことでも気になって悲観的になり、
相手からすればただの八つ当たりにしか見えない態度をとってしまうのが女ではないだろうか。
彼女のその時既に好きな人がいさえしなければ、特に気にならない、
気になっても喧嘩にまで発展する必要性のなかったことだ。
ただ置手紙だけですませてしまうというのも酷い話だ。いくら彼女が離婚を決めていたとは言え
話し合っても意思が覆らないとは言え
ふたりの問題なのだから面と向かって話し合うのが誠意というものではないのだろうか。

そしてまた、彼は彼で戦っているとは言え、井戸の中に入るというのもすごい行為だ。
理解できるすれすれの行動だろう。
確かに間宮中尉の話があったからこそ、なにかを考えたり見つけたり失ったりできるのではないだろうかと、考える気持ちは分かるのだが。

個人的には、トオルはクレタ島へ行くべきだったと思う。別にクレタと共にでなくとも、クレタ島以外の場所でもいい。
ただ、彼女の言うようにそこにとどまっていてはいけなかったのではないだろうか。
圧倒的な不在感の中で、ただ待つという行為は精神を疲弊させる。
丁度、『N・P』で翠から手紙が来た直後の乙彦と同じだと思う。

時間を丁寧にかけることがある種の洗練された復讐である、という感覚は非常によく理解できた。
トオルは何にどうやって復讐するのか。それを見つけなければならないだろう。
 
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