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ふと思いついては消えていく戯れ言の中にも大事なことや本気なことはあるよな、と思い極力書き留めよう、という、日々いろんなことに対する思いを綴っています。
2024.05.20 Mon
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2010.03.14 Sun

3月13日、18時の回を観に行ってきた。
今回のハーフタイムシアターは、演目の順番が日によって交互に変わった
今までの形と違って
常に、はじめに『ミス・ダンデライオン』、次に『南十字星駅で』という順序で上演されている。
この順序が非常に大事なのだ。
なんと言っても『南十字星駅で』は、クロノスシリーズの完結編
と言える集大成のお話なのだから。

それぞれのストーリーについてはこちら。
http://www.caramelbox.com/stage/halftime2010/index2.html


まず、『ミス・ダンデライオン』。
医者になった鈴谷樹里が、自分が11歳だった夏へ跳ぶ。
恋したヒー兄ちゃんの命を救うために。

自分はあしあな/ミスの時も勿論観に来ているので
ミスの内容や演出についてはある程度知ってはいる。

それでも、何度観ても凄いとまず思うのは、さつきさんが11歳の頃の自分のことを
説明しているシーン。
「11歳の樹里に声をかけてきた看護士がいた」
と言った後、そのままさつきさんが看護士として樹里に話しかける。

よくある演劇の『嘘』かと思いきや…

話が進むにつれ真相がわかってくるのが凄い。


以降ネタバレあり。


ヒー兄ちゃんにとって、樹里は自分を助けてくれた女性だけれど
11歳のこの前まで話を語り聞かせていたあの少女だということも分かっている。
彼の樹里への思いは、単なる恋愛としての愛だけではないはず。
樹里の正体がわかってからヒー兄ちゃんが樹里を抱きしめるシーンも
最後に頭を撫でるシーンも
彼の深い愛情を感じてたまらなく好きだ。

さつきさんが終演後明かしたところによると
ご本人も似たような別れを経験されたことがあるとのことで
樹里が未来に弾き飛ばされるときヒー兄ちゃんに
「作家になって」と言う台詞には思いがこもるそう。
私もこのシーンは胸が押し潰されそうになるシーンのひとつ。

私の友人に作家がいるのだが
彼が作家になったのも、彼女との約束だったからだ。
「絶対作家になって」。
目の前で事故で亡くしてしまった彼女との約束を守り
彼は若くして受賞しプロの作家としての道を歩んでいる。
彼を見ていて私が思いを寄せるのは、ヒー兄ちゃん。

物語は樹里の視点で描かれ、樹里にだけ思い入れて観てしまいがちだが
一目惚れした女性が可愛がっていた樹里の成長した姿で
3日しか一緒に過ごすことが出来ない。
ヒー兄ちゃんにとっても、悲しい恋の物語だ。

未来に弾き飛ばされ、いつか帰ってくる樹里を待っていたヒー兄ちゃん。
野方の予測した日付を過ぎても戻ってこない樹里。
もしもこのまま二度と出会えなかったら?
そう不安を覚えたこともあっただろう。
それでもいつか出会える日の為に、ヒー兄ちゃんは約束を果たした。

ふたりの再会のシーンで、ヒー兄ちゃんが訪ねて来て
樹里が振り返り驚くシーンは何度見ても良い。
観客的には
その時のヒー兄ちゃんは格別に恰好良く、若くなければならない
のだけれど、この達也さんは本当に格別に恰好良くて、若々しいのだ。

2006年に上演された『ミス』の再演とあって
達也さんとさつきさんは「(あのときより)老けたね」といわれないよう
努力されたとのことで
加藤さんのブログなどでも「前より若返ってる」と噂は聞いていたけれど
実際に拝見しても、さつきさん扮する樹里は可愛らしくて
ヒー兄ちゃんは恰好良いのだ。

ヒー兄ちゃんは草食系男子らしいが(笑)
慣れない未来で野方を頼り、ひたすら原稿に打ち込み
結果を手にして樹里を待っていた彼も
やはり樹里に惚れられるだけの強さがある人なのだなと感じた。

       ***

今回の休憩は30分。
間に流れていたクロノスシリーズをまとめたムービーを見ながら
頼人のことを考えた。
キャラメルの舞台では、頼人がクロノス・ジョウンターを引き取ったことになっている。
科幻博物館の館長が頼人なのだ。

観劇にあたり、原作は事前に読んでいた。
『野方耕市の軌跡』は、キャラメルの舞台を見た梶尾先生の
アンサー小説とも言える作品。
野方=西川さんとして読み、興奮した。
なんといっても、あの野方が過去に跳ぶのだから。

科学者としての理性的な立場を保ち
実験以外で人を跳ばすことを否定してきた野方。
そんな彼が自ら過去へ跳ぶ。
しかも、79歳のおじいちゃんになってから。
きっかけは、科幻博物館の館長の来訪。

過去へ跳ぶ過程で一度未来に行くことになるのだが
野方はそこで吹原に出会い、正体は明かさないものの
クロノス・ジョウンターが博物館にあると教えたことになっている。

淡々と進み勝ちな梶尾先生の作品で、科学者野方に
こんなある意味感情的な言動をさせたのは、
キャラメルボックスのパワーだと私は思う。

個人的には、見合いの席で好感を持った女性樹里を
片思いの相手を助ける為に過去に跳ばすというのが
野方らしくない気がしたのだ。

何度止めても振り切ってみんな過去へ行ってしまう。
見送る野方も複雑で辛く思ったこともあったに違いない。

そして自らの結婚を経て孫まで出来て、守るものがたくさん出来た。
そんな野方が、遂に過去へ跳ぶ。

       ***

『南十字星駅で』。
キャスティングからいって、原作のように吹原と野方が未来で
”和解”するシーンは無い。
ならば一体どうなるのだろうかと思っていたが…

この脚本は酷過ぎる!
一歩間違えば、女の視点からすれば
壮大なストーカーの話である吹原の話が『クロノス』で
あんな感動的な描かれ方をしたときも驚いたけれど
この脚本の素晴らしさはもう反則である。

キャラメルのクロノスシリーズでは、原作にないキャラや
絡みなどが描き込まれ、人間関係を作り出しているのだが
それが保たれ微妙な関連性が持続している。
「青木さんに赤ちゃんが生まれた」
「娘に手伝わせるから」
など、うっかりすれば聞き逃してしまうような台詞の一言一言に
血が通っており、登場人物ひとりひとりの深みが増す。
出てくるホテルやお店などからも
時は過去から現在に、そして未来に繋がっているのだと
その流れの中に人は日々生きているのだと思わせてくれる。


原作と違い、館長と野方は知り合いなので
クロノスが故障し修理を依頼するという形。
しかも、頼人は吹原の為にクロノスを買い取ったことになっている訳だ。
「(修理をするのは)吹原の為なんだろう」
という台詞にぐっときた。
現時点の頼人の過去で、姉は亡くなった儘。
それでも、彼にとって吹原は恩人であることに代わりはないはず。
いろんな意味で。

樹里役さつきさんにとっての野方は、「ただただ感謝」。
樹里にとっての野方は恩人だ。
しかし頼人にとっての野方の存在は複雑だろう。

いよいよセルに入る野方を見送りに来た頼人の言葉は
胸に突き刺さった。
あぁ、それを言ってしまうか、とも、言って当然とも思った。

野方が、過去に跳ぶ理由を「(萩塚は)親友だからだ」と答え
納得する頼人なのだが
演じられた畑中さんも、このシーンを大切に考えておられたそう。
「親友」以外の言葉であれば収められない感情が溢れたかもしれない。
しかし、親友を救いたいと答えた野方。
『クロノス』で、「俺が(吹原さんの代わりに)過去に跳ぶ」と
言い出した頼人にとって、
”助けたい親友”と聞いて吹原の顔も思い浮かんだかも知れないと邪推する。

もう吹原は、頼人が助けることの出来ない地点まで渡航を繰り返している。
しかし、野方はまだ間に合うのだ。

この後過去へ跳び、思いを遂げた野方。
博物館に戻った野方が次に起こした行動は…。

こんな形で吹原との”和解”が描かれるとは思わなかった。
意表を衝かれ、思わず溜息が出た。


意表と言えば
個人的には畑中さんが萩塚役なのかなと思っていたので
野方役だったのはやや意外。
萩塚役の左東さんは、『エンジェル・イヤーズ・ストーリー』に続く
好青年な大学生役でとても良かった。
畑中さんの「野方今ここ」が聞けたのも中々嬉しい点。
また、野方に続く”悪役”をクロノスで演じた三浦さんが
とても良い息子(仕事を休んで旅行に付き合う、などという会話
ほろっとした)を演じられていたのもいろんな意味で良かったなと思う。
この時点ではまだ副館長である海老名さんの姿を見、
未だ時の神クロノスと戦い続けている吹原を思いもした。

他にも素敵なところはたくさんあったし
クライマックスはこれからなのだけれど
ストーリーの核心部分に触れることでもあるし
きりが無いのでこの辺りで筆を置こうと思う。


クロノスシリーズの”完結編”、
『南十字星駅で』。
過去のシリーズ作品をご覧になった方は必見である。
是非ともお薦めしたい。
また、ご覧になったことが無い方にもやはりお薦め。
『南十字星駅で』を観た後『クロノス』を見るのもまた面白いはず。

彼の旅は、まだ終わっていないのだ。




ブログライター取材の模様は
加藤さんのUst.で生中継もされました。
http://www.ustream.tv/channel/katohmasafumi

出演者の皆様、成井さん、
質問に丁寧に答えて下さり有難うございました。


また観に行きます!


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