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ふと思いついては消えていく戯れ言の中にも大事なことや本気なことはあるよな、と思い極力書き留めよう、という、日々いろんなことに対する思いを綴っています。
2024.05.20 Mon
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2009.02.02 Mon

あつをさんのblogで『葉桜~』と並んで紹介されていた。
『タイトル買いした。僕はとても面白かったけど、腹立つ人もいると思う。』
とのことだったが、私は残念ながら後者だ。

この筆者は、確かに構成は面白い作家だ。
プロがプロを見て成る程、この書き草はうまいな、と思う分には良いが
読者がエンターテイメントとして読めるかというとやや疑問が残る。
勿論個人の好みなので、このオチも賛否両論なのだろうが。

自分は葉桜で、上手いが面白くないと感じていた人間で
これを読んでこの筆者の本は自分には合わないのだろうと感じた。


以降ネタバレ。

あっさり何人も人が死んでいくのは好きじゃない。
ミステリーと言えば人が死ぬ。
その事件に巻き込まれ、解決を試みる。このパターン。
小学生が次々殺されるのは、フィクションの中とは言え気分は良くない。

『息子が犯人かも知れない』
と思ったとき、何故妻に相談できないのか自分には分からない。
夫婦なのだし二人の子どもだろう。
相談しないのは寧ろ妻への裏切りとすら感じる。
仲が良いと言うならすればいいのに。
女はすぐ感情的になるから、か?

些細なことに突っ込むが、別に犬は人と同様に扱うと言うことを聞かなくなる
などということはない。
躾書を鵜呑みにしている人間の発言だ。
犬と人間を同列に扱うなんて乱暴 という発言は
人間が一番、それ以外の生き物は人間より劣るという考えが透けて見える。

こう言った細かい部分は他にもいくつもある。
『道具に生命が宿っていないように』という表現もそうだ。
そういう考えの父親の息子だから、生命に愛情が持てなかったのでは?

一人暮らしでもない限り、パソコンにパスくらい設定する。
こんな親を持つ子どもなら特に。
なんで家族を信頼し、設定しないものだ と断言できるのだろう。

どうも父親がどこか歪んでいる。
ここまで筆者が計算で書いているならすごいかもしれないが
恐らく筆者がこういう考えの人なのではないだろうか。


パソコンの日記を消したから、だからなんなのか。
ライフルマークを知っている博識の父親が
消したデータをサルベージできることもまさか知らないのか?

こんな妄想癖の父親、嫌過ぎる。
正直、補導されて面会したとき「そっち」と展開した息子の独演、
人の命を軽んじているところ以外は至極真っ当だったのでは。


はじめは興味深く読んだ。
確かに、もしこんな状況になったなら、と恐ろしいし
問題提起という意味では興味深い。
が、小説として面白いかと言えば答えは否だ。
況してミステリー小説の面白さがあるかと言えばやはり否。

一度妄想オチだと判明してしまえば
余程じゃなければどうせこれも妄想オチなのだろ?
と読者は覚めて読んでしまう。
それが裏切られれば良いのだが、裏切られることなく
父親は延々と長々といろんなパターンの妄想を繰り返し
結局ふりだしに戻り、最初となんの進展もないまま物語は終わる。
まぁある意味タイトル通りの小説。

無理に爽やかそうに終わらそうとしているが
パンドラの箱にたとえられても
箱から出た悪いもの、は全部父親の妄想に過ぎず
最後に希望が残っていると何故思えるのかわからない。

妄想オチは予想はしたが、こう何度も使われても飽きる。
ばればれだ。

犯罪被害者ではなく加害者、その家族を扱った小説なら
他にもっと良いのがたくさんある。
それなりの答えを出す姿こそが問題提起であって
本当に「もしこうだったらどうしようか」というだけの問題提起を
小説一冊使ってやられても困る。


こういうのが好きな人は勿論いるだろう。
自分は苛々したし、時間の無駄とすら感じた。
繰り返す妄想オチとラストがつまらなさ過ぎる。
真保さんの『繋がれた明日』の方がリアルで辛くて
余程人間の怖さと美しさを感じたなぁ。

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