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ふと思いついては消えていく戯れ言の中にも大事なことや本気なことはあるよな、と思い極力書き留めよう、という、日々いろんなことに対する思いを綴っています。
2024.05.20 Mon
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2007.10.24 Wed
作家 真保裕一さんのエッセイの中に出てきたので、読んでみた本。
一小節読み進めるごとに、有り触れた一家族の日々の描写の中に微かにほの暗く不安がつきまとい、読者の不安を煽る。素晴らしい文章だと思う。
ラストの一小節前のたった一言、たった数行のために、家族の日常が延々と描かれるのだ。
それが無駄だという意見もあるようだが、私には必要だと思える。
ごく普通の家族で、特別幸せでも不幸でもなく、転職や学校でのいじめや躾、近所づきあい、馴染めない環境、等々の中で描かれるからこそ、感動があると思うのだ。
個人的に自分はキリスト教に対して免疫があるが、一切ない一般の日本人読者には、中々理解しがたい部分があったのではないだろうか。主人公たちがモルモン教徒であり、日曜日は教会へ行き、ボランティアに勤しみ、物語のクライマックスをクリスマスに迎える、というような作りは、私は非常に納得がいった。が、そのような習慣に親しみが無い人々にとっては、彼らが教会へ通い、息子が先洗礼を受けることも物語の本筋には必要ないと思えるのではないだろうか。それが唯一、日本人読者がこの本に対しての評価を下げる要因ではないかと思う。

以降ネタバレ。

ザップが障害を持って生まれてきて、その障害がどうなったのか描かれないことも、信仰と大きく関わりがあるのではないか。
モルモン教は詳しくはないものの、プロテスタントでも堕胎は罪であり、障害も神の思し召しなのだから。
個人的には、ザップがどうなったのかが描かれなくても、子供たちが弟へ理解を示しているだけで十分ハッピーエンドを示しているように思える。

冒頭にある『ぼうず』が、スティーヴィでないと予想することは簡単だ。
その後、グラス、リー、シスター・ルスール、バッピー、様々な怪しい人間が出てきて、一体この中の誰なのか、はたまた誰でもないのか、と考えさせられる。
何故この理解があり、信心深い両親が、スティーヴィにはっきりと空想の友達のことを訊かないのか、それだけがずっと疑問だった。ことによると彼は類稀なる霊能力者で、殺された子供たちの霊が見えているのではないか?と思っていたからだ。
結果それは予想通りで、両親がそれを訊いて理解してしまっては全てが明らかになったときの衝撃が半減してしまうので描けない部分だったのだろう。
「家に戻ろうとしたんだ。でも、間に合わなかった」
その部分を読むまで、スティーヴィが既に殺されていたということには思い至れなかった。
残り数十ページという段階で突然種明かしがされ、ハイスピードで事実が語られ、その理由が少々ファンタジーで、しかも悲しい結果であるというのは、切ない。
最後までリアルな物語でいて欲しかった読者には、がっかりした部分であったと思う。
フレッチャー家に出てくる虫についても、子供たちの亡くなった日と関係があるという記述はあったものの、何故虫や蜘蛛である必要があったのか。単に不気味な印象を読者に与える為だけだったのではないかと思うので、理由付けとしてはやや安易か。
ゲームにしても、イマイチぴんとこない気がする。
それにしても、家族の愛、ほとんど描かれないが他の被害者の少年とその家族の愛を感じる。
クリスマスの夜、祝福の夜、家族で過ごす夜、失われていた息子が、ほんの束の間邂逅を果たす。
聖夜にふさわしい、素晴らしい奇跡だ。
誰にでも起こりうる、悲しいいくつもの事件、心に残る素晴らしい日々。

天国で先に待っているであろうスティーヴィ。きっとスコッティや他の7人と一緒に遊んで待っているのだろう。
家族が再び出会える日を、心から祈り祝福したいと思う。

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