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ふと思いついては消えていく戯れ言の中にも大事なことや本気なことはあるよな、と思い極力書き留めよう、という、日々いろんなことに対する思いを綴っています。
2024.05.20 Mon
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2009.08.27 Thu



『重力ピエロ』の中に出てきた
”神様のレシピ”という言葉が気になって読んでみた。
やられた、と思った。
デビュー作でこの出来とは。

伊坂さんの小説は数冊読んでみたが
彼は事実を知っているのだ、と漠然と思う。
私などはどこかでまだ人を信じたいガキで
それでも最後は分かり合えるのじゃないか
という思いが最近まで捨て切れなかったのだが
どうしてもわかりあえない関係というのは本当はある。
単純に分かり合えず、離れれば良い関係もあれば
傷付けることしかない関係もある。
それも、物理的に傷付けることだってある。

彼の小説に出てくる人間は、とても強く綺麗な人もいれば
どうしようもなく、字面で追っているだけで絶望的になるほど
残酷で、人を痛めつけることが好きな
どうにも分かり合えない、同じ人間と信じたくないような人も出てくる。
この世の中には二種類の人間がいるのだ。

どの小説にも出てくるキーワードのようなものが
がいくつかあるが、
名探偵もそのひとつのように思う。

自分がいるから世の中は改善しない。
未来を話しても結果は変わらない。
神様の位置から降りたい。
自分は神様では無い。
何も出来ない。


読めばわかるのにどうして解説が必要なんだ
という解説文が、センスが良いと思った。
良い小説には良い解説がつく、のかもしれない。

ラストでは自分がその場にいるかのようで
この先起こることが目に浮かぶようで
体が震えるようだった。

大きな流れは押し流されるばかりで
ひとりの力で変えることは出来ず
神様がレシピを決めているのなら尚更何も出来ないのかもしれない。
見ているしかない。救えない。
でも、祈ることは出来る。

そしてその祈りが、流れを変えるのだと思う。


 

以降ネタバレ。

 


徹夜作業をすることはナルシシズム
かなりの時間を会社で過ごすが、そのことを自慢に感じたり、優越感を得たりすることはなかった。
舐められるわけにはいかない。労働時間などという能力とはまったく関係の無いことが原因で頭の悪い上司に見下されたくはない。

この件には、ぐさっときた。
丁度自分が現実で、そういう思いでいるところだったので。
多くのサラリーマンたちは、こんな思いに苛まれているのだろう。
そこで舐められない為に残業をする人もいれば
付き合ってられない、自分が大事だと仕事を辞められる人もいる。
私は断然後者だが、だからと言って
コンビニ強盗をしようという発想にはならないが。


頭がよくて相手の痛みを知ろうとしない人間は長生きする。
これは残念ながら、事実なのかもしれないと思う。


死にたかったと言うよりも、死んでも良かった
という気持ちは、とてもよく分かる。
自殺しようとは思わない。しかし、死んでも良い。


神様のレシピ。
未来はいくつもの枝葉に分かれている。
悲しい結末に向かうことを誰も止められない。

大きな流れがあり、
失わないとことの大きさに気がつかない。
失ったものは二度と戻らない。

「もし戻ったら?」
「今度は何がなんでも失わないようにするしかない」
読んでいて、涙が出そうになった。
失ったことがある人間にしか、その必死さは分からないのかもしれない。

飛行機雲をそう教えず
正しい道を歩きなさい、ということだ
と教えた優午は、どんな思いだったのだろう。
未来がわかっても、神様ではなかったカカシ。

桜との会話は興味深かった。
食べる食べないの区別について、伊藤は
「友人であるかどうか」と答えを出したが
自分なら果たしてどう答えるだろう。
回答出来る自信がそもそも無い。

一人の人間が生きるのに何百の犠牲があるのか
その価値のある人間は0。
正直、本当にその通りだと思う。
ただ、
価値がなくとも花の無邪気な可愛らしさは変わらない
し、その可愛らしさに価値を見出すこともある。
生き方次第だ、と言い訳をするのも
人間らしいある種の傲慢さなのだが。

西の空で虹が見えると雨だから
猫が木に登るのは虹が見たいからだ
というのは、桜の口から聞くと余計に
ほっとしてとても良いことで、真実のように思える。

カカシを作った少年に言った
「きっと人と話すのが面倒になったんだ。
それでも話は聞いてる」
という言葉も、聞いていてほっとした。
嘘ではあるが、嘘ではないかもしれない。
ひょっとしたら、本当にそうかもしれない。

全てを知っていた優午。
伝えなく無かった。
役割を実行する決心の後押しでの自死。

「取り返しのつかないことをやったんじゃないか」

人間への復讐、だったのだろうか。
人を操り人を殺すことで。
でもそう思ってそうしたのなら、それは所謂
『神様』っぽくはないだろうか。

小山田の
「優午は、俺たちの大事なカカシだよ」
という台詞も好きだった。
幻想であろうとなかろうと、
過去形ではなく現在進行形で、大事に思っている。

徳の字の入った日比野のタオルには驚いた。
そんな”オチ”があるとは思わなかった。

優午の頭は、何で出来ていたのだろう。
彼は声や神経を失ったが、
音楽は彼に届いただろうか。

伊藤の祖母の、
「愛している」
という言葉が響く。

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