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ふと思いついては消えていく戯れ言の中にも大事なことや本気なことはあるよな、と思い極力書き留めよう、という、日々いろんなことに対する思いを綴っています。
2024.11.22 Fri
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2008.03.13 Thu
プロの書いた小説にこう言うのもなんだけれど、
相も変わらず文章が上手い。
早々と最愛の姉という言葉を出し、
姉の生活を語り色々な形での最愛を見せた上で
最終的に『最愛』を語る。
それ以外にも例えば、
『事が起こってからでないと警察は動いてくれない』
と同じ文章を間を置いて二度繰り返し、
三度目にして
『動かないのは何も警察だけではなかった』
とすることで、事態の重みが強調され
ずっしりと心に響く。
この重み、その時点で読者に分かっている以上に
重みがあったことが、最後まで読んで
初めて分かるところがまた心憎い。

以降ネタバレ。


男子高校生との二十代前半の女性恋愛は
そんなにいけないことなのだろうか?
そんなにも後ろ指刺されなければ
ならないことなのだろうか。
高校生が17歳でなく18歳だったなら問題なかったのだろうか?
そんなのくだらない。
当人同士が真剣だったなら
それで十分だと思う私は甘いのだろうか。
たとえ二十歳を過ぎていたって、
若い側の親は心配するし、年上側は気に病む。
人の恋愛を犯罪呼ばわりする同僚の男の方が、よほどくだらない。
四の五の言わずにそんな暇があるなら金を返せばいいのに。

主人公が姉を何度も強いと言うし、それを否定はしないけれど
そこまで強いとは正直思わなかったのは、
千賀子さんが私と似た人間に思えたからかもしれない。
私は男同士の、しかも知らない人間同士の揉め事を止める勇気はない。
ただそれでも、人の愛し方が似ている気がするのだ。
伊吹に自分の過去の傷や罪を洗い浚い話してみたり、
相手が殺人犯でも、今現在償っていない罪を背負っていても愛することができたり
罪を償って戻ってくるまで待っているという
意思表示のために、
敢えて本人が渋っている入籍をしてみたり。
この種の真っ直ぐさ、というよりも強引さだろうか。
これは私の中にもあるものだ。
好きな人には恥と思うことでも曝け出すし、
それで相手が少しでも気が楽になってくれたらと思う。

相手がどんな間違いを犯していても嫌いにはならないし、
相手を思いこそすれその間違いを正そうとするけれど
絶対に見捨てることはない。
全身全霊をかけて好きになる。
全力で、真剣だ。

だからなのか、彼女が実の弟と関係を持ったと聞いても、
正直なにもマイナスの感情は抱かなかった。
『世間』の人間はやはり違うのだろうか。
汚らわしく思うのだろうか。
親戚や、真尋のように、言葉を失って距離をとってしまうのだろうか。

いつも真保さんの本を読んでいると、
どんでん返しに継ぐどんでん返しに騙されるのだが
今回初めてそれが無かった。
悟郎が真尋に、
愛する女性の子供をこの世に迎えることが出来なかった
と語った台詞、相手は姉ではないのかと思っていたので。
傍から見ていたら、近親相姦で許されない恋なのだろう。
汚らわしく非常識に思われても仕方ないのかもしれない。
でも、本人たちにとってはそんな汚い気持ちではないはずだ。
もっと崇高で透明な気持ちだ。純粋なのだ。
この目の前の人を好きだという気持ち。
どう大切にしたらいいのか、愛したらいいのか、
それを伝えたらいいのか。

理屈ではないのだ。

哺乳類である限り、触れることで愛情を確かめ合うのは本能でもあるのだし、
なんの不自然もないように思えてしまう。
ただ好きなだけなのだ。
ただ、愛しているだけなのだ。
大切なだけなのだ。
魂の結びつきとでもいえばいいのだろうか。

悟郎が姉を抱いたことはごく自然なことで、
どうしても間違っていたとは思えないのだ。
悟郎と千賀子それぞれの気持ちが、
分かりすぎるほど分かってしまう。
私が千賀子の立場でも、悟郎を受け入れるだろうし
子供を宿したとしたら生みたいと思うだろう。
大切な人の血を分けた大切な命なのだから。

互いの存在を確かめ合い、赦す為に寝ることだって当然あるだろう。
子孫を残す以外に性行為に目的を見出したのが人間なのだから、
快楽のためでなく確かめ合うために
互いを大切に思ってことに及んでなんの不自然があろうか。


『一瞬の感情が人を永遠に縛る』。
この言葉にはドキッとした。
一瞬が永遠になる。
忘れられない人をいつまでも心に抱くことも
逆上して人を傷つけることも
その一瞬がいつまでも自分を縛ることになる。
たとえ一瞬の気持ちでも、たとえそれに縛られても、それは一時の気の迷いとは違うものだ。紛れも無く自分の気持ちだから、迷っても後悔はしない。
迷っても進むから結局は迷わない。続いていくから永遠になる。


ラストは衝撃だった。
いくらもう長くはないと言っても、安楽死させてしまうとは思わなかった。

ただ、自分の手で最愛の人を殺す。
これもまた最愛であり永遠だ。永遠に千賀子は悟郎のものになり、
誰にも穢されることがない。
そしてその罪も愛も背負って生きていくこともまた、
一瞬の感情に縛られた永遠なのだろうと思う。

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