ふと思いついては消えていく戯れ言の中にも大事なことや本気なことはあるよな、と思い極力書き留めよう、という、日々いろんなことに対する思いを綴っています。
2006.01.19 Thu
密告
真保 裕一
いつも思う。
なんで真保さんの小説の主人公の男の人たちは、こんなにも強いんだろう。
ホワイトアウトという映画の前評判を人から、
「踊る警察官の次は、戦うダム職員らしいよ」
なんて聞いて、
「ダム職員がダムと人質を守るためにテロリストとひとりだけで戦うんだって」
と聞いたときには、なんて馬鹿げた話だろうと思った。
無理に決まってる。説得力が無さ過ぎる。
ま、映画は確かに馬鹿げていたんだけど、原作はとんでもなかった。
主人公はとても強かった。
自分の過去の過ちを、辛いながらも認め、償おうという強さがあった。
立ち向かう体力も気力もあった。
その強さと緻密な文章に引き込まれて、一見無茶なことも
この人なら、これならできる、と思い込んでしまって
無茶だよと一歩引くのではなく、主人公の身になってどきどきしながら読んでしまうのだ。
やっぱりこの小説の主人公の萱野さんも、とっても強かった。
ちょっとネタバレ。
人に胸倉を捕まれたり、唾を吐きかけられたり殴られたりして、
冷静でいられるものだろうか?誰にも助けも求めず?
パイプ椅子に座って雑巾で引き出しを拭くくらいなら私にもできるけれど、
逮捕状をとられて脱走劇を繰り広げる勇気ってあるだろうか。
いくら無実の罪とは言え。
窓から飛び降りて。
男たちに囲まれて殺されそうになって、泣き叫ぶんじゃなくて
110番通報をするために、縛られている体を目一杯使って動くなんて。
出来るか?普通。
でも、ありえない!と一笑にふすには、余りにリアルなんだよな。
ただ、今回個人的に初めて、密告者が誰かというのが
大分早くに分かったんで
ちょっと嬉しかった。(笑)
いっも裏の裏のそのまた裏って感じなので。
広永さんがもっと大活躍してくれるのかなーと思ったので、ちょっと残念。
そして、現実にこんなことがあっても、結局は揉み消されちゃう危険性が
ある気がしてしまうんだよな…。
広永さんがいくら頑張っても、萱野さんが命をかけても、駄目かもしれない。
そういう世界ってあるんだよなあ…なんて…。
萱野さんが助かって本当に良かったけれど、矢木沢さんは死んでしまったし、
その死んだ理由もうわー…って感じだったな。
でも、夢はあるっていう終わり方だから真保さんてば大好きだ。
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