ふと思いついては消えていく戯れ言の中にも大事なことや本気なことはあるよな、と思い極力書き留めよう、という、日々いろんなことに対する思いを綴っています。
2008.11.05 Wed
平行してよしもとばななさんの『イルカ』という小説を読んでいて
どちらからも”男と女”。特に女の生生しさを感じた。
女であるばななさんが女を描けるのは当然かもしれないが
男である真保さんがこうまで描けるというのは異常とも言える天才ぶりは
相変わらずである。
連載モノだったらしく、男女の手紙のやりとりで終始構成されている。
以降ネタばれ。
夫婦が離婚だ浮気だとごたごたと、文通でやりとりをしているところから始まる。
手紙文しかないのに、読者は徐々にふたりの名前や状況
そこにある問題などを理解していく。
心憎いのは、主人公の男女のやりとりに終わらず
女性の祖父母の手紙が祖父の遺品から出てきたのでコピーを送る
として、三篇から成る第二篇は祖父母の文通へと移り変わること。
男女すれ違いの問題だけに終わらず
戦後の苦しさ、現代とは違う男と女の役割
深い愛
刑務所の習慣のようなものまでが包括され描かれている。
主人公の夫婦のやりとりに再び戻り、
夫が離婚を承諾するところで物語は終わっている。
これは納得がいかないような気もするものの
妻が返送された離婚届を提出するかどうか。
離婚したがっていた妻が、祖父母の手紙を読んで
愛とは、夫婦とは、ということを考え直して、
その行為に安易にうつるとは思えない。
結婚してなんらかの疑問を一度でも感じた夫婦は
これを読んで何がしか感じるところがあるのではないだろうか。
家庭が単なる同居の場所になっているという言葉にははっとさせられた。
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