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ふと思いついては消えていく戯れ言の中にも大事なことや本気なことはあるよな、と思い極力書き留めよう、という、日々いろんなことに対する思いを綴っています。
2024.11.21 Thu
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2009.11.20 Fri


6編の短編から成る原作の内3編を抜き出し
死神対老女、 恋愛で死神、旅路を死神をLive,Love,Driveとして
かつお話の流れとして美しいように、Love,Drive,Liveの順に展開し
2時間に纏め上げたのは素晴らしいと思う。
思っていた以上にスタイリッシュかつコミカルな舞台だった。
冒頭にざっと死神についての説明シーンがあり
自分は原作ファンだが、そうでない人も十分に楽しめる作りだと思われる。

シンプルかつギミックに溢れた舞台装置
窓枠が吊り上げられたり車が動いたりといった趣向に加え
映画のタイトルや小説の扉絵のような映像が
章の切り替わるタイミングで舞台上に降りてくるスクリーンに映し出される。
ただお洒落に無駄に映像や音楽を使っているのとは違って
小説を読み解いているような気がしたし、面白い演出だった。
音楽を重視しているのはキャラメル因子だろうか。
鼓膜に響いて煩いと感じる紙一重の直前までボリュームをあげて
唐突に止め、訪れた静寂の中に響く台詞。

羽場さんの演技が不自然に紳士的で堂に入っていて
作中の死神が目の前にいたらこんなだったかもしれない、と思わされた。
正直、自分のイメージしていた千葉よりは柔らかくまた年配のような気がしていたのだが
実際目にしてみると芝居の説得力に唸らされた。

身贔屓なのかもしれないが、冒頭でピストル自殺をする役を岡田さんが演じられていたが
あのほんの数秒で、台詞も「あああっ」という叫び声しかないのに
一瞬にして空気を作れるところが流石だと思った。
yahooのニュースで、荻原の動きが『コミカル』と書かれていて、
コミカルという表現はないだろうと思っていたのだが、
実際見てみると確かにコミカル。
立ち稽古の頃は割にシリアスだった演技が、作りこまれ変えられている。
だからこそ、飽く迄も前向きで癌で死ぬのも
それより前に刺殺されるのも、『最高ではないが最悪でもない』
と言えてしまう荻原の性格が、あの短時間によく表現されていると思った。
犯人役の畑中さんとの格闘シーンの迫力は、やはり普段からのコンビネーションの良さかと思わされた。


また、畑中さんの"悪い人"な役柄は、今までクロノスかデンキ島くらいが関の山だったので
殺人犯という役柄、しかも突発的に殺してしまうチンピラである森岡を
どのように畑中さんが演じてくれるのかとても興味があった。
ただ、彼の演技力と眼力の強さなら、ならどちらのベクトルにも振れるだろうと思っていたのだが
実際見てみてやはりその通りだった。
声のトーン、仕草、歩き方、全てが
不良で、しかしそれは弱さの裏返しである森岡を物語っていた。

この"Drive"で些か残念だったのは、『春』。
伊坂ファンであれば、この『旅路を死神』に出てくる壁に落書きをしている少年は
『重力ピエロ』の春であることは当然わかっていることだし
重力ピエロを読めば、春も殺人を決意しており、壮大な計画に着手し始めた矢先に千葉と会った事がわかる。
当然そこまでこの舞台で表現することは出来ないまでも
春の役柄はもう少し大事に扱って欲しかった。
あれでは、ただの壁に落書きをする不埒な若者と区別がつき辛い。

配役が発表になる前、一人で何役も演じるという話だったので
畑中さんのそのひとつの役がこの春であることを期待していた。
畑中さんなら、憂いと決意を含んだ春という若者を
丁寧に表現してくれたような気がする。

芳本さんは、Loveよりも、最後のLiveの演技の方が個人的には好きだった。
また、これも個人的な好みだが、青空の写真は
美容室から見下ろす風景か、もっと真っ青な青空が良かったと思うが。
この老女が千葉を死神と見破り、それでも怖がったり退けたりせず
温和に残りの命をいつも通りに紡ごうとしている姿
それに思わず千葉が圧倒される姿が見ていて面白いし
どこかほっとさせてくれた。

結局人が死んでいく話なのに、後味の悪くない
不思議な原作の魅力を、十二分に表現してくれたと思う。
付け加えるなら、この4人の役者以外は端役ばかりだったのが
少々残念だった。

MINERVA WORKS #1
『Live,Love,Drive. 死神の精度』

2009年11月18日(水)~29日(日)
紀伊國屋サザンシアター

原作 伊坂幸太郎『死神の精度』(文春文庫刊)
脚本 竹重洋平
演出 松村武
出演 羽場裕一/岡田達也 畑中智行 中村哲人
實川貴美子 岡野真那美 福本伸一/芳本美代子

料金 (全席指定・税込)
11月18日(水)~20日(金)…5,500円
11月21日(土)~29日(日)…5,900円

http://www.nevula.co.jp/shinigami/

 

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