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ふと思いついては消えていく戯れ言の中にも大事なことや本気なことはあるよな、と思い極力書き留めよう、という、日々いろんなことに対する思いを綴っています。
2024.12.04 Wed
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2009.09.04 Fri


面白くないとは言わない。が、非常に違和感がある。歪な鏡を見ているような気持ち悪さがある。
ネット上の一般の方々のレビューを読んでみたが、正に賛否両論。高評価か低評価のどちらかといった感じだった。
ファンの人と批判している人がどちらも相手側に対して、
「(これがつまらないという人は、またはこれが面白いという人は)読解力がないからだ」
という論旨が多かったのには苦笑いしてしまった。

私は、ある一定以上の読書量がある人にとってはつまらない小説だろうと思う。
随分と誉められている『独創的』な設定は全てどこかで見たものだし、
『斬新』な文章は敢えて難解にしようと作られたあざとさが見えて非常に読みづらい。
時系列通りではないから読みにくい、という単純な問題ではけしてなく。
これは確かに、理解出来ないのは読解力のせいではあるまいと思う。
奈須きのこさんご自身がSFやミステリが好きで、影響を受けた作家として幾人か名前をあげているが、
彼らの本を読んだことがある人にとってはこの小説は物足りないばかりか、
本物っぽく装おうとわざと難解に書き上げたような歪さを感じるのではないだろうか。
式という人格だけが難解で不思議で常軌を逸したように書かれている分には
世界観の演出として良かったのだろうが、誰の視点でもそれは変わらない。
とすれば、著者がそのような人なのか、『作った』文かどちらかということになる。

綾辻行人さんの『十角館の殺人』は確かに面白い。小説ならではのトリックである。
最近のミステリ小説にはそういった書き方がよく見られ、非常に引き込まれる気持ちはわかるのだが、
この小説の『トリック』は、「あんな風なトリックっぽくしたい」という幼稚で単純なトリックに過ぎない。
たとえば、髪の長さが中途半端だろうと、昔男が女物の着物を着るのが流行った時代があったにしても、
高校生が着物をきちんと着ていて男女の区別がつかないなどありえる訳が無い。
幼児の浴衣じゃあるまいし。
帯の結びや小物、色使いに至るまで色々な決まりごともあり、そこから判断出来る。
にも関わらず、どちらか分からないことにして中途まで話を進めるのは、トリックではなく誤魔化しているだけだ。
ついでに言えば、『本物』の着物に拘る人が、寒いからと言って羽織や着物用コートや襟巻きではなく、
真っ赤な上着を着ようとする辺りも解せない。
真っ赤なコートというチョイスが、如何にも厨二病という感じ。
綾辻さんの解説はどこまで本心なのだろう。
大人の事情が一切なく大絶賛なら、正直綾辻さんの評価が個人的には下がるやもしれない。

正直、ここまで内容に引き込まれないし続きを読む気にもならない小説というのは久し振りだ。
好き嫌いの問題ではない。私は嫌いな小説でも同じ著者の本を五冊は読んでから判断するし、
自分には合わないと判断はしても嫌い・下手という評価にはあまりならない。
一冊の本は何があっても必ず読み通す。
が、この小説は途中で投げ出したくなるのを堪えるのに随分忍耐力を使った。
私はラノベも同人も好きだし偏見もない人間だが、敢えて言うなら、
この小説は悪い意味で『所詮同人』であり、『ラノベの癖に文学を気取った小説』であると思う。

ただこれは、著者を批判するものではない。
批判されるべきは、コミケで売れたからと言ってほぼそのまま出版してしまった講談社や担当者だろう。
確かに『信者』が既についているので、そのまま出した方が批判も少なく、
信者分の売上は見込めるから大人の事情としては問題なかったかもしれない。
奈須さんやTYPE-MOONのファンには当然受け入れられるだろう。
小説を大して読んだ事の無い人には『斬新で独創的』だと評価されるだろう。が、それだけだ。
多分同人やゲームシナリオとしてはそうつまらなくもないだろうに、残念な小説としか言いようがない。

 

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